
対談03 ヤフー前社長・井上雅博[追悼対談]
Part3 真っ直ぐに正直に
2017年08月18日
ヤフー株式会社 代表取締役社長
宮坂 学様
MANABU MIYASAKA
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そんなグレーなこと、ヤフーはやっちゃダメなんだ。
トシ
私はヤフーに入ってきたときの印象を、今でも強烈に覚えています。なんか品がいいというか。
宮坂
ああ、みんな言いますね。悪い人がいない、上品。
トシ
他社での経験ですが、正直、首をかしげるような人もいました。極端な話、パートナーやお客様より、自社の利益を優先してやろう、みたいな。それがヤフーだと他人を踏み台にしようという雰囲気を全く感じられませんでした。そしてこれは、どこから来るのだろうと。
宮坂
やっぱり井上さんじゃないでしょうか。企業文化は多種多様で、勝つためには蹴落としていいんだとか、グレーゾーンでもいいから勝ちに行けとか、いやルールは守るべきだとか。ではそれらは何によって決まるかと言えば、トップの志向性に寄ると考えています。
何が正解かは一概には言えませんが、井上さんは徹頭徹尾、『正直にやれ、グレーはやるな』というタイプでした。それに対して、多少は無茶しても達成すればいい、というスタンスの人から見ると、のんびりしているように思えたかもしれません。 今でも覚えているんですが、以前、動画共有サービスが流行り始めた頃、日本でもやればいいと考えたことがありました。でも井上さんは、そんな二番煎じはダメだと、頑なにOKを出さなかった。『そういうグレーなことは、うちはやってはダメなんだ、やめろ』と。それによって失った利益はあるかもしれませんが、仮にその時は上手く行ったとしても、後々、大きな悪例になった可能性もあると思っています。
多少グレーでも勝てば官軍、そんな前例を一度でも作ってしまえば、二度目、三度目が生まれていく。変な勝ち方を覚えては、絶対にいけないと思うんです。その点、井上さんは必ず法律の中でやれと言っていました。そして必要なら、法律の方を変えにいけと。そうしないと長期的に見て続かない。企業トップのマインドセットが、ヤフーの安心感を作っていったと思っています。
トシ
トップがアグレッシブすぎるのも問題ですね。それが企業文化になってしまう。
宮坂
そう思います。


トシ
広告の審査もそうですね。
宮坂
厳しいですね、うちは。
トシ
後から審査を行うところもあります。その方が事前の審査よりも、ずっと楽ですから。
宮坂
ヤフーは審査基準がとても厳しくて、広告主様からも何とかできないか、と言われたこともあります。
トシ
ある意味、正直さというか人の良さみたいなものが、他から入社してくると、すごくよくわかります。
宮坂
勝ち方の美学というか、正しく勝つんだという意志が、井上さんの中に強くあったと感じています。そこは私もしっかりと引き継いていくつもりです。グレーゾーンでの挑戦を否定するつもりはないですが、少なくともヤフーはこうなんだと。それって、スタイルの違いだと思うんですよ。
世の中に一石を投じる会社や、時間がかかっても法律から変えていく会社があってもいい。まずスタイルがあって、それを井上さんがつくり、私が引き継いでいく。私は今のスタイルが好きだし、優劣の問題ではないと思います。
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